Saturday 11 December 2010

フジファブリックの歌詞と日本語

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昨日、NHK国際放送を見ていましたら、「Cool Japan」(日本が外国に誇れるカッコいいものを、紹介する番組)で「日本語」を取り上げていました。

「日本語を学ぶ外国人が難しいと思うことベスト3」は、「文字の種類が多い」(漢字約2000字、ひらがな46文字、カタカナ46文字の3種類の文字を、使い分けるから)「助数詞が多い」(何を数えているかによって、助数詞の種類を使い分けるから。動物には匹、長いものには本、薄いものには枚など。また、犬がいっぴき、にひき、さんびきのように、助数詞自体も不定変化)「人称代名詞が多い」(第一人称だけでも、私、わたくし、俺、おいら、僕、わし、など種類が多い。自分の性別、立場など考えなければならないし、場合によっては失礼にあたる。方言を加えたら・・・)だそうです。

日本人の皆さん、思い当たりますか。
「確かに、日本語って難しいな。」と、思いましたか。

世界では、「自分たちの母国語は、簡単だ。」と思っている民族の方が圧倒的に多い中、日本語は、日本語を母国語とする日本人自身が「難しい」と思う言語だそうです。

事実、言語学において、日本語は世界でも難解な言語の一つといわれています。
言語とは文化そのものですので、その言語を使う民族の文化や考え方が顕著に反映されるものです。

日本人の趣向を分析すると、何かに名前をつける時にはそのもののイメージを大切にし、一般的に受け入れられやすく、自然や季節が感じられるものを好む、のだそうです。
日本にいるとあまり気づかないのですが、外国にいると日本人だったら絶対考えないネーミングが普通にあったりして、驚くことがあります。
例えば、タイでは極小の唐辛子を「プリック・キー・ヌー」(ねずみの糞唐辛子)と呼びます。いくら小さいからといって、どうしてそれを唐辛子の呼称として選ぶわけ!?と、日本人だったら思いますよね。
ピータンも「カイ・イー・マー」(馬の小便卵。アンモニア臭がするからという理由で)・・・。排泄物を食べ物の名前にしようという発想、日本人には絶対ないです。

タイだけではありません。
イギリスでも、子供たちが大好きな「ブルズ・アイ」(牛の目玉)という飴がありますが、目玉をしゃぶるって・・・これも日本人の感性からはありえないネーミングです。あ、でも番組の中では、「親子丼」は残酷な名前だと外国人からご指摘がありました(笑)。

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日本料理や和菓子の世界を、思い出してみてください。
「竜田揚げ」の名前は、百人一首にある在原業平の歌から付けられています。

千早振る 神代もきかず 龍田川 からくれなゐに 水くくるとは
在原業平
材料に染み込んだ醤油の色が、揚げることで紅葉のような色合いになるために、紅葉の名所である竜田川に紅葉が流れる姿が連想されるから、この名前がつけられました。季節が感じられる美しい名前です。

その他、「鹿の子」(豆が寄り集まった様子が、小鹿の背中の斑点を連想させる)、「淡雪」(ふわふわの淡雪に見かけが似ている上、口の中で雪のようにふっと溶けるため)、「みぞれ和え」(大根おろしがみぞれ雪を連想させるため)、「月見そば」(卵が満月と月にかかる雲を連想させるから)など、挙げだせばきりがありません。

日本独特のお菓子、「和菓子」は、四季折々にその時期にしか作られないものも沢山あり、日本語の美しさとお菓子のおいしさがひとつになっている、素晴らしい文化だと思います。

もうひとつの特筆べき日本語の特徴は、「オノマトペ」(擬音語・擬態語)にあります。
日本語にはオノマトペが英語の4倍あるといわれ、音を言語としてとられるという日本人独特の感覚が反映されています。
例えば、外国ではあまり注目を浴びない虫の音ですが、日本人は「虫の声」と表現し、秋の風物詩として愛でてきました。いろいろな虫の声を、オノマトペを使い美しく表現します。

日本人は、ひとつの言葉にいろいろな情報をいれようとして、それがオノマトペの発達につながったようなのですが、今でも新しい擬音語・擬態語が増え続けています。

フジファブリックの歌詞をみてみてください。
今まで説明してきた「日本語の特徴」を、フル活用しているのがフジファブリックの歌詞世界なのです。

曲のイメージを大切にした曲名、自然や四季の美しさを感じられる言葉の数々、志村正彦流オノマトペ。ブログの紹介をするところに書いたことの繰り返しになってしまいますが、フジファブリックの歌詞は音楽と共に、世界に誇ることのできる「日本の美」だと思っています。

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例えば、「銀河」。
「タッタッタッ タラッタラッタッタッ」「パッパッパッ パラッパラッパッパッ」
足早に、足取り軽く、逃げ出す様子が伝わる擬態語です。

「きらきら」の空が「ぐらぐら」動き出している

この「きらきら」という表現で、冬の空、上空で強い風が吹いていて星がきらきら瞬いている様子が、頭に浮かびます。「ぐらぐら」は、小刻みにではなく、割りと大きく不安定に動き出している様子です。
片寄さんがブログでもおっしゃっている、「志村君が歌いたかったこと」。それは、冬だから雪とかマフラーとかそういう単純なものではなくて、「澄み切った空気」が表す冬だったのです。一般の人に伝わりにくいのではという当初スタッフが抱いていた心配も無駄に終わり、今ではフジファブリックの代表曲となっています。

日本語の美しさと、フジファブリックの歌詞。
他のバンドにはない日本文化独特の歌詞世界は、彼らの音楽には欠かせない魅力の一つだと思います。

フジファブリック 「銀河」 お聴きください。

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